本店は中国山地の最奥の飯南町頓原(いいなんちょう・とんばら)で大正11年に創業、出雲そばを昭和33年から打ち続ける四代続く老舗。 奥出雲の山間にある本店の味を受け継ぎ、出雲大社に支店として店を構えました。
奥出雲そばへのこだわり
そばの実を甘皮まで挽きこんだ“一本挽き”の黒いそばは、そば打ちの基本である“挽きたて・打ち立て・ゆでたて”の「三たて」を忠実に守った昔ながらの美味しさです。
1本の麺棒を使い、丸くのす「丸うち」という代々受け継いだこの技法で、丁寧に均等にのした生地をさらに同じ太さに切ったそばには独特の風味とコシの強さがあり、この初代から受け継いだ伝統の味を守りながら、日々そば打ちに励んでいます。
野趣あふれる「一本挽き」の黒いそばに合う、こっくりした濃い目の“熟成だし”のつゆが特徴。
『一福』のつゆは初代店主・伊藤ソメが地元の人々に好まれる味を求めて創り上げた独創的な製法です。
これを三代目店主が煮沸滅菌と熟成技術を取り入れて全ての店舗で提供できるようにし、4代目の伊藤弘典がとりしきる現代までかたくなに受け継いでいます。
そばの要でもあるこのつゆは、初代から受け継いだ製法と味を何よりも大切にしながら、専用の工場で作られています。
工場のある飯南町は1,200m超の大万木山(おおよろぎさん)をはじめ、中国山地の中核をなす1,000m級の山々に囲まれており、美味しい水に恵まれた環境にあります。
そば作りに欠かせない水は、神話の山・琴引山水系の、ミネラル豊富で口当たりもまろやかな湧き水を地下100mから汲み上げています。
さらにこの水で選び抜いた北海道産の天然真昆布・新鮮で旨みたっぷりの煮干し・そして創業当時から仕入れ続けているしょうゆをじっくり煮詰めて、芳醇なコクとまろやかさが自慢の“秘伝のつゆ”にしています。
曾祖母から受け継いだ、奥出雲伝統のそばの味 ~ 『一福』の歴史 ~
『奥出雲そば処 一福』の始まりは、大正11(1922)年にまでさかのぼります。
当初は鮮魚と仕出しを扱う『伊藤商店』として産声をあげましたが、昭和33(1958)年に、現当主の曾祖母にあたる伊藤ソメが、当時 食事処があまり無かった島根県飯南町頓原で、本業のかたわらに出雲そばのお店を開店。
その名が現在の『奥出雲そば処 一福』でした。 「一福(いっぷく)」の名は、初代のソメが「お客様や家業に最高の幸福がもたらされるように」という想いで名付けたのが由来となっています。
そして“挽きたて・打ちたて・茹でたて”の“そばの三たて”を見事に実現したお店は、またたく間に賑わうように。
さらに三代目の伊藤隆は、板前の修業に出て“鮮魚と仕出し”の『伊藤商店』を継ぐはずでしたが、そば打ちが肌に合ってソメに手習い。
縁あって参加した他県でのイベントや百貨店の物産展での実演販売も大成功して、以来、全国津々浦々でそば打ちを実演する日々が始まりました。
このとき隆が行く先々で見たお客様の反応が、のちの『一福』の礎となったそうです。
それは「“一福の味”を求めてくださる方々に、始まりの地・頓原から本場の味をお届けしたい」という想い。
そして実演販売から店舗展開、通信販売へと、全国に本場の出雲そばをお届けするようになったのです。
初代のソメから受け継がれ、60年以上も守られ続けてきた伝統の味は、今なお全国の人々に愛され続けています。 昔ながらの製法を守りながらも、口にする人々の要望も取り入れながら、変わらず “奥出雲の野趣あふれる素朴な味わい”を追求し続けています。
各地で奥出雲伝統の味を~出雲大社・神門通り店 ~
創業当時から変わらぬ味わいを、出雲大社神門通り店でもご堪能いただけます。
出雲そばの特徴的な食べ方である、割子そばや釜あげ蕎麦は観光に来た際にはぜひ味わっていただきたい品です。
割子そばは丸い漆器を3段重ねにし、提供されます。それぞれの器にお好みの薬味を乗せ、つゆを直接絡めて召し上がっていただくことで出雲そば独特の“一本挽き”の麺の風味が際立ち、そばそのものの美味しさが味わえます。
一福の釜揚げそば
茹でたそばを釜の湯と一緒に盛り付け、だしをかけながら召し上がっていただく、そばの味と香りが濃厚に感じられる、そば好きにはたまらない一品です。 また地元・飯南町特産の舞茸をカラッと揚げた舞茸天ぷらは一福の名物となっています。食べ応えのある肉厚な舞茸の、えも言われぬ豊かな香りが、そばの風味とハーモニーを奏でます。
そば以外にも甘味なども人気
他にもそば屋のぜんざいや、出雲大社神門通り店だけでしか味わえないそばソフトクリームなど甘味もご用意しております。テラス席ではペット同伴でお食事をして頂けますので、参拝の合間のちょっとした“いっぷく”にぜひご利用くださいませ。
広い店内にはお店の味をそのまま楽しんでいただける土産品も種類豊富に取り揃えており、そばの実入りドレッシングや国産韃靼そば茶など蕎麦にこだわった商品も充実しています。
吟味を尽くした材料で実直に探究し続けるそば商品は、独自の製法で麺の太さやコシなどを、できるだけ手打ちに近い状態に仕上げているため、ご家庭で「気軽に『一福』の味が楽しめる」、と好評をいただいております。 旅の思い出に…お世話になっているあの方に…出雲の郷土料理であり、“日本三大そば”のひとつでもある出雲そばを、ご家庭でも心ゆくまで堪能していただけます。